Title Transcription
フリーハンド ガホウ イガイ ノ カイガ ギホウ
Authors
船井 美周
Abstract
 「フリーハンド画法以外の絵画技法」は、その種類がけっして少ないとは言えないが、いずれもデッサン力から解放された技法であり、且つ多分に自動画的な面を持つ技法である。そのうち、画面形成に自動運動の跡を(直接あるいは間接に)用いることにその特色を見る技法がおよそ半ばを占める。そうした技法では、自在運動の跡を用いるフリーハンド画法のように、写実から非具象にわたる大きな幅を持つ表現の可能性はなくても、大きな偶然性ないし非偶然性の利用による半偶像的ないしは非偶像的な独特な表現ができる。また、「フリーハンド以外の絵画技法」のおよそ半ばを占める別の一群の技法は、画面形成に(レンズを介さないで)実物の形体ないしその跡の類を用いることにその特質がみられるもので、フリーハンド画法に比し、あるいはレンズを介して実物形態の跡を利用する(芸術)写真の技法に比し、素材となり得る体験への制約は大きくても、自動的な大きな写実性ないし抽象性の利用による独特な表現を可能とする。 ところで、普通教育としての美術教育の内容の一分野として、絵画関係の教材はその重要性を認められてはいるが、宿命的にデッサン力に著しい不足を感ずる者(中学生以上はかなり多い)に対する絵画関係の政策教材〔表現教材〕としては、フリーハンド画法によるものは不適当であり、「フリーハンド以外の技法」によるものが中心となるべきである。またそうした政策教材は、デッサン力に余り不足を感じない者に対しても適宜加味されるべきである。 ただし、制作の動機ないし素材的体験と、作品に表現されてまさにその内容そのものをなす体験とを混同するような誤解に基づく見解によれば、「フリーハンド以外の絵画技法」による制作は、いわゆる絵画制作としても、表現教材としても、過小評価されるおそれがある。
Publisher
鳥取大学教育学部
Content Type
Departmental Bulletin Paper
ISSN
02878011
NCID
AN00174563
Journal Title
鳥取大学教育学部研究報告. 教育科学
Current Journal Title
The journal of the Faculty of Education. Educational science
Volume
13
Issue
1
Start Page
83
End Page
100
Published Date
1971-06
Text Version
None
Rights
注があるものを除き、この著作物は日本国著作権法により保護されています。 / This work is protected under Japanese Copyright Law unless otherwise noted.
Citation
鳥取大学教育学部研究報告. 教育科学. 1971, 13(1), 83-100.
Department
Faculty of Regional Sciences/Graduate School of Regional Sciences
Language
Japanese